◆11月 3日(土)

  御会式(おえしき) 法話 

  御会式とは、日蓮大聖人を偲ぶ法要のことで、

  我々で言うところの法事、年回忌法要の事である。


  法要終了後に弟子の笠井恒明による法話がなされました。
      
 
 

題目〈南無妙法蓮華経〉三唱

本日は日蓮聖人のご命日を偲ぶ法要にご参列頂きましてありがとうございます。
 実際お亡くなりになられたのは10月13日、朝の8時頃と伝えられておりますが、妙蓮寺では参列しやすいように文化の日に合わせて行っております。

お会式というのが日蓮聖人のご命日だということを知っている方は多いと思います。では「お会式」ってどういう意味かご存知でしょうか? 意外と知られてないことかと思います。略された文字を足しながらお話ししたいと思います。「お」というのは丁寧表現なので隠します。残された「会式」に文字を足します。「法会儀式」となります。法会というのは法要という意味なので、法会も儀式もどちらも同じような意味なのです。この「お会式」というのは、運動会の「会」、入学式の「式」の部分なのです。つまり、会式の上にまだ文字が隠れているのです。お会式というのは略さずにいえば「日蓮聖人報恩法会儀式」なのです。ですから今日は特に日蓮聖人に対する報恩感謝の気持ちを持って手を合わせなければいけません。

 恩といいますと「四恩」という言葉が色々なお経や中国の文献なんかにも出てきます。四恩というのは、父母の恩、師匠の恩、国の恩、三宝の恩の4つです。

@ 父母の恩とは命を与えてくれた親、先祖への感謝。

A 師匠の恩とは育ててくれた先生や上司、周囲の人々への感謝。

B 国の恩とは平穏を与えてくれている国や環境、自然の恵みに対する感謝。

C 三宝の恩とは仏法僧、つまりお釈迦様、法華経、日蓮聖人を初めとする仏弟子に対する感謝。

          
          
               笠井恒明(弟子、息子)


 その中でも、今回は国の恩について少しお話したいと思います。
 私達は恩に報いなさい、感謝しなさいと言うと受動的、受け身な感謝を考えます。しかし仏教では、能動的な、働きかけることが報恩であるとされています。だからこそ、日蓮聖人は『立正安国論』という国に対する諫暁書(意見書)を出し、幕府に目を付けられてでも国を正そうとしました。それが仏弟子としての国への恩返しの方法なのです。幕府への恩返しではないのです。

 日蓮聖人の国に対する報恩観や法華経の信仰のあり方を厳格に受け継ぎ、日蓮聖人の生まれ変わりだと言われたのがここ妙蓮寺の開山、第一世であります久遠成院日親上人です。日親上人は1407年に今の千葉県埴谷という千葉北部に生まれ、縁あって中山にある法華経寺で修行することになります。法華経寺というと100日間の荒行をやることで有名です。この寺は日蓮聖人の厳しい部分を特に色濃く伝える方が多く、日親上人もそういった環境で育ったために日蓮聖人の生まれ変わりだと言われる程の厳しい方になったのだと思います。そして21歳の時に当時の日本の中心、京都へ布教に向かいます。

妙蓮寺の前の道は昔の東海道でしたから日親上人も京都への道中このあたりを通ったのでしょう、その時にもともと真言宗だった寺を改宗させてそこから日蓮宗、華生山妙蓮寺としての歴史が始まっているのです。そして妙蓮寺の開山となった日親上人は、改宗した智善房という元は真言宗の僧侶を第二世として、京都に向かうのです。

                  


 京都での日親上人は、日蓮聖人に倣い法華経こそが真実の教えであるから法華経に帰依しなさいと強く布教します。さらに1439年には『立正治国論』という書によって幕府を諌めました。
 これは日蓮聖人が1260年に幕府を諫暁した『立正安国論』を180年の時を経て蘇らす書物でありました。これも先ほど述べましたように、国を思えばこその報恩だったのです。『立正治国論』を呈上してから、日親上人は日蓮聖人を彷彿するほど厳しい法難を受けます。幕府に捕まり水攻め、火攻め、槍攻め、鞭攻め等数々の法難を受けました。

その中でも最も有名なものが熱した鍋を頭にかぶせるというものでした。その時の様子が描かれたのが下の絵です〉
 そのことから日親上人は別名「鍋かむり上人」「鍋かむり日親」とも呼ばれるのです。いろいろな難を受けながらもお題目を唱え続け、法華経の加護により赦免され、その時牢獄で教化した本阿弥清信という方の支援を受け、京都に「本法寺」という寺を建ててそこを中心に京都の布教を行いました。
 本阿弥家というのは本阿弥光悦という人が特に有名で、芸術家の一族でした。日蓮宗と縁の濃いところで言いますと池上本門寺の総門の額を書いたのがこの光悦です。本阿弥家は今でも日蓮宗本山の本法寺を菩提寺としていて、日親上人と本阿弥家というのは切っても切れない縁なのです。

  
                                 

                                      〈法難図  京都本法寺所蔵〉

本法寺は今も京都駅から二条城のもう少し先にあります。機会があったら参拝してみて下さい。そしてもし参拝することがあったらぜひ覚えていてもらいたいことが1つあります。妙蓮寺の位牌堂に日親上人の木像があるのはご存知でしょうか?入って正面に座っていらっしゃるのが日親上人です。その座像は本法寺の日親上人像を模写して彫った木像なのです。ですから本法寺に行った際は位牌堂の日親上人像と同じものが祀られていると思いますので気にして参拝してみて下さい。

本日はお会式のこと、四恩のこと、妙蓮寺第一世日親上人のことをお話しさせて頂きました。開山上人に恥ずかしくないように日々精進していきたいと思います。皆様の益々のお題目の信仰、法華経のご加護を祈念しまして、話を終わりとさせていただきます。

玄題三唱  ご清聴有難うございました。